ギターやベースの弾き心地や音に大きく影響する「フレット」。
消耗が進んだまま使い続けていると、演奏性や音程に深刻な影響が出ます。
フレット交換の必要性・作業内容・判断基準について、実際のリペア現場の視点で解説します。
フレット交換とは何か?
「フレット交換」とは単にフレットを新しくする作業ではありません。
・ネックの歪み修正
・指板面の最適化
・演奏性と音の再構築
これらを含めた“ネック全体のリビルド作業”です。
フレット交換が必要なタイミング
以下の症状がある場合はフレット交換を検討するタイミングです。
■ フレットの摩耗
・弦の当たる部分が凹んでいる
・チョーキングで引っかかる
・音がビビる/詰まる
■ 音程のズレ
・開放弦は合うのに押弦するとズレる
・コードが濁る
■ 調整では改善しない症状
・すり合わせしても改善しない
・ネックのねじれや波打ちがある
フレット交換を行う3つの目的
① 消耗したフレットのリセット
フレットは弦との摩擦で確実に減っていく消耗品です。
限界を超えた摩耗は調整では対応できません。
② 演奏性・音のアップグレード
フレットサイズや素材によって
・押さえやすさ
・音の立ち上がり
・サステイン
が変化します。
③ ネック状態の根本改善
フレット交換では指板修正を行うため
・反り
・ねじれ
・波打ち
といった問題を根本から改善できます。
フレット交換の作業工程(プロの現場)
フレット交換は単純作業ではなく、ほぼすべてが判断作業です。
① 状態診断
楽器の状態を細かく確認し、最適な作業プランを立てます。
② フレット抜き
専用工具で慎重に抜き取ります。
無理に引き抜くと指板が破損するため、必要に応じて加熱しながら作業します。
③ 指板形状の修正
ネックの歪みを修正し、理想的な指板面に削り整えます。
指板Rの変更も可能です。
※ここでメイプル指板は塗装を一度除去する必要がありますが、ネックの状態が良い場合や指板面の状態を維持したい場合には例外的に行わない選択肢もあります。
④ フレット溝の調整
・溝内部の清掃
・ダメージ修復
・溝幅/深さ調整
指板の素材や硬さの違い、使用するフレット、 トラスロッドの効き具合等から、 最適な溝の状態を総合的に判断します。
⑤ フレットの準備
フレットサイズ、素材、指板の状態等を考慮し、指板Rに合わせた曲げ加工や足の調整を行います。
⑥ フレット打ち込み
ハンマーでの打ち込みとプレスでの圧入を状況に合わせて併用します。
線状のフレットは釘のように一点に強い力を加えれば良いわけではないため、 力を加える箇所、力加減、力を加える順番などを随時判断しながら浮きが出来ないようにしなければなりません。
浮いているフレットは弦振動を吸収するため、すり合わせで高さを揃えたところで音のつまりやデッドポイントの原因となります。
⑦ サイド処理
はみ出したフレットを指板幅に合わせて整え、角を滑らかに仕上げます。
仕上がりは演奏性に大きく影響します。
⑧ 塗装(必要な場合)
多くのメイプル指板では必要になります。
グリップ面との色合わせも行います。
ローズウッドやエボニー指板でもフレット溝端のパテ埋めを合わせて行うことがあります。
⑨ すり合わせ・研磨
高さを揃え、正確な音程とスムーズな弾き心地を作ります。
最終的に鏡面仕上げまで磨き上げることで、見た目が良いだけでなく摩擦が減るためすり減りにくくなります。
⑩ ナット交換
フレット高さに合わせて必要な場合に実施します。
⑪ セットアップ
新しいフレット・ネックの状態に合わせて全体を調整します。
フレット交換は「技術差」が出る作業
フレット交換はマニュアル化できる作業が少なく、
・どこまで削るか
・どのフレットを選ぶか
・どこを残すか
すべてが経験と判断に依存します。
同じ「フレット交換」でも、仕上がりに大きな差が出る理由はここにあります。
よくある質問(Q&A)
Q. すり合わせで対応できませんか?
軽度の摩耗であれば可能ですが、削る量が多い場合は演奏性が損なわれるためフレット交換が推奨されます。
Q. フレット交換の費用はどれくらい?
楽器の状態や仕様によって変動しますが、基本料金46,200円からが目安になります。
加工の難しいステンレスフレットを使用する場合や指板塗装が必要な場合、セットネック構造の場合などには追加料金が必要になります。
Q. フレットの種類は選べますか?
可能です。演奏スタイルに合わせて最適なサイズ・素材をご提案します。
Q. フレット交換にかかる期間はどれくらい?
通常は2〜4週間程度が目安ですが、作業内容や混雑状況によって前後します。
Q. フレット交換すると音は変わりますか?
変わります。フレットの素材やサイズによって音の立ち上がりやサスティン、アタック感に違いが出ます。
改善したい部分と変えたくない部分をご相談頂ければ最適なフレットをご提案させていただきます。
Q. ステンレスフレットのメリットは何ですか?
摩耗しにくく寿命が長い点が最大のメリットです。
一方で加工難易度が高いため、交換費用は高くなります。
Q. フレット交換すると弾きやすくなりますか?
ネック状態の修正も同時に行うため、多くの場合で弾きやすさは大きく改善されます。
Q. ナット交換は必須ですか?
必須ではありませんが、フレット高さが変わるため多くの場合で調整または交換が必要になります。
Q. 古いギターでもフレット交換できますか?
可能です。状態を確認した上で、楽器の価値やコンディションを考慮した最適な方法をご提案します。
フレット交換で得られる変化
フレット交換後は
・弾きやすさの改善
・音の立ち上がり向上
・ピッチ精度の改善
など、楽器が“別物”と感じるレベルで変化します。
ご依頼をご検討の方へ
フレット交換は、単なる修理ではなく
楽器の性能を最大限に引き出すための重要な作業です。
状態確認のうえ、最適な作業内容をご提案いたします。
お気軽にご相談ください。
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・写真での事前診断対応
・郵送での修理受付可能
・状態に応じた最適プランをご提案

