【作業事例】Orville by Gibson J-200 サドル交換

「弦を張りっぱなしにしていたら、夏の間に弦高が高くなってしまった」とのことで修理のご依頼を頂きました。

SJ-200

お預かりした段階での弦高は12Fで3.5~4.0mm。
ボディTOPの膨らみが大きくなったとの話でしたので、まずはTOPの膨らみの矯正を行いました。
湿度と熱と圧力をコントロールして、割れに気をつけながらボディTOPを矯正します。

圧力をかけた状態で1ヶ月ほど様子を見たところ、弦高が1mmほど下がりました。
もう少し時間をかけて、弦高を下げたいところですが、近々ライブで使用される予定があるとのことでしたのでサドル側で弦高を下げることにします。

オリジナルのサドルを加工して低くすることもできますが、ブリッジ上面ギリギリまでスラント加工されている加工しづらい形状であったため、新たにブランク材から削り出して制作します。
そのほうが今後TOPが沈み込んだり、ネックが動いた場合にはオリジナルのサドルに戻せば良いというメリットもあります。

しかし、ここで問題が発生します。

サイズを合わせて発注していたサドル材が大きく反ってしまっていました。

反ったサドル材
「サドル材」と打とうとすると「佐渡流罪」に変換されてしまうのは私が佐渡ヶ島出身だからでしょうか。。

ギターのサドルやナットには主に牛骨が使用されています。
木材等と同じように天然の素材のため、湿度や経年変化で変形してしまうことがあるのは仕方がないのですが、残念ながらこれでは使用できません。
問い合わせたところ、ありがたいことに今回は良品と交換してもらえるとのことでしたので、交換していただきました。

サドル材1

元のサドルより一回り大きいサイズに切り出された牛骨を削ってサドルを作っていきます。

まずは微妙な反りを取ると共に、ブリッジのサドル溝にピッタリ入るように厚みを調整します。

サドル材2

加工前の厚みが2.92mm。
これを平面出ししながら両面を削って厚みを調整していきます。

サドル材3

2.60mmになってブリッジ溝に少しキツめに収まるようになりました。
この段階では少し厚めにしておいて、最後に磨くと僅かに薄くなって丁度スッとサドル溝に収まる計算です。

次に幅と高さをオリジナルのサドルから写し書いて削り出します。

サドル材4

幅と側面のRをサドル溝に収まるように加工したら、オクターブ調整用に各弦のスケールに合わせてスラントをつけます。

サドル材5

オリジナルのサドルはスラントの角度がキツいの為、新たに制作するサドルは角度を浅くして高さを下げれる余地を作ります。

サドル材6

弦高を12Fで0.5mm下げたいので、サドルは高さを1mm低くします。
ナットの高さをほぼ0とすると、ナットからの距離が12Fまでの2倍になるサドル上では下げる高さも2倍になる計算です。(たぶん中学校とかで習った数学で、なんとかの定理とかだと思います)

高さも決まったら全体を磨いて完成です。

サドル

弦を張って、各弦のバランスを微調整、音出しをしてビビリがないことを確認したら作業完了です。

サドル交換

作業後の弦高は12Fで2.0mm~2.5mmになりました。
元の状態に比べてだいぶ下がったので押弦しやすく、弾きやすくなりました。

6弦弦高
1弦弦高

使用予定があるなどの納期の都合も、ご相談いただければ極力対応いたします。
お気軽にお問い合わせください。

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