【作業事例】MORRIS W1200D ブレイシング剥がれ修理

全体的なメンテナンスとご自身で手を加えた箇所の修正のご依頼でお預かりいたしましたアコースティックギター「MORRIS W1200D」の作業事例です。

MORRIS

ハカランダの突板に縦ロゴ

ツリーオブライフ

ツリー・オブ・ライフインレイ(唐草インレイ)

ボディ

スプルーストップにアバロンパーフリング

バック

ハカランダ3Pバック

ゴージャスなルックスをしたアリス堀内孝雄モデルのギターです。

フレット

ナットがサイズの合っていない既製品に交換されているのと、フレットがかなりすり減って凹みが出来ているため、ナット交換とフレットすり合わせを含むプレミアムセットアッププランで作業を進める事になりました。

いざ作業に取り掛かろうと弦を外したところ…
「ギィ…」
と床がきしんだ時のような音が聞こえました。

どうやらボディ内部のブレイシングに剥がれている箇所があり、弦のテンションがかからない状態では動いてしまうようです。

ブレイシングの浮きは強度の低下はもちろん、ボディトップの鳴りを相殺して阻害してしまうため、サウンド面でもよくありません。
ひどい状態だと、特定の音程を弾いた時に共振して「ビビビビビビッ」と歪んだような音を発する事もあります。

ボディの色々な場所をタッピングして音の響きの違いからブレイシングの剥がれている箇所を探していきます。

ブレイシング浮き

無事に見つかりました。
シックネスゲージがブレイシングとトップ材の隙間に入り込んでいる所が浮いている箇所です。

先程の動画と同様にブリッジを上から押すと隙間が出来るのが見えます。
場所でいうとXブレイシングの6弦エンド側、ギターを構えた時に右肘が当たる辺りになります。
直接目で見ることは出来ないので、ボディ内部の作業は手探りで進めていきます。

マスキング

まずは浮いているブレイシングの周りをマスキングテープで養生します。
ちなみに手探りで隙間なくマスキングテープを貼るのはかなり難しいので、何か良いアイテムをご存じの方がいたら教えてください。。

柱

次に浮いている箇所を支えるように柱を立てます。
ボルトと長ナットを組み合わせた柱で突っ張り棒のように突っ張れる構造になっていますが、ここでは強く突っ張らずにギリギリ自立できるくらいの長さにセットします。

クランプ

柱を立てた位置を外側からクランプで押さえます。
こうすることでブレイシングとトップ材を正しい位置で固定することが出来ます。
しっかりと固定して、シックネスゲージで隙間が無いことを確認したら、柱とクランプを外して、隙間に接着剤を塗り、再度固定します。

接着

はみ出た接着剤を処理したら、接着剤が乾くまで待機します。

撮影はスマホをサウンドホールから入れて行っていますが、作業時には一工程ごとに小さい鏡とペンライトを駆使して作業箇所の確認を行っています。
手術に使うロボットアーム付き内視鏡のようなものがあればもっと作業がしやすいんだろうなと思うのですが、5000万円くらいするみたいなので到底手が出ませんね。
技術の習得にも何年もかかりそうです。
もし家に使ってないロボットアーム付き内視鏡あるよって方がいたら連絡くださいw

完了

接着剤が乾いてしっかりと固定されたら作業完了です。
ここからプレミアムセットアップ作業を行いますが今回の記事では割愛します。
大体の作業の流れは以下の記事をご覧ください。

ブレイシングの剥がれは目で見て確認することが難しいため、気づかずに使用し続けていることがあります。
メンテナンスで持ち込まれて発見し、修理をしてお返しすると「こんなに澄んだ音がするギターだったんだ!」と驚かれることが多々あります。
メンテナンスがてら一度チェックに出してみるのはいかがでしょうか?

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