【作業事例】Fender Japan Jazz Bass ノイズ対策

一般的な仕様のJazzBassでノイズが気になるとのことで、ノイズ対策セットのご依頼を頂きました。

JazzBass

アンプに繋いでチェックをすると「ブーン」といったノイズが出ています。
弦に触れるとノイズが大きくなり、コントロールパネルに触れるとノイズが小さくなります。
弦がアースに落ちていない時に起こる症状です。

こちらのJazzBassは人気のある1962年頃の仕様を踏襲したモデルなのですが、この年代の仕様のJazzBassには起こりやすい問題です。

弦アース

弦をアースに落とすためにはブリッジからジャックのアース端子まで電気が通るように接続する必要があります。
この年代の仕様では、2弦と3弦の間に見える、ブリッジからリアピックアップに伸びている金属の線がその役割を担っています。
しかしこの線が銅製のため酸化しやすく、酸化するとブリッジとの間に導通が生まれなくなり、弦がアースに落ちなくなる原因になります。
また、ボディ表面に露出している状態のため、ピッキングや弦交換の時に引っかかって断線することもよくあります。

実際に問題が多発したため、当時のFenderではこのアース線の仕様は数年で廃止されています。
しかし見た目の印象が大きいので、1960年代初頭の仕様を踏襲したモデルでは今でも採用されていることが多いです。

酸化した銅を研磨して酸化膜を剥がせば導通は回復するのですが、またすぐに酸化するため、見た目を変えずに根本的に構造を改善します。

アース穴

赤い線の位置にブリッジ下からコントロールキャビティに貫通穴を開けて配線材を通すことで見た目を変化させずに新しいアース線を追加します。

作業のためにパーツ類を外して準備をしたところ、驚くことがありました。

パーツ外し後
ブリッジ下
アース穴

なんとブリッジからリアピックアップキャビティにはすでに配線を通すための貫通穴だけが開いていました。
おそらく別仕様のモデルと同じ製造ラインで共通のボディを作っているために、使わない穴でも穴開けだけはされていたのだと思います。
ここに穴が開いていればリアピックアップキャビティからコントロールキャビティへはもともと配線穴があるため、新たな穴開け作業は不要です。

細長いドリルビットを使った穴開け作業は、木目やボディ材の貼り合わせ位置などによってドリルが流され、思わぬ位置に貫通する事故が起こる可能性もあるので正直ラッキーでした。
実際にボディ裏に貫通してしまうという痛ましい事故が起こっているのを数回見たことがあります。。
穴開け作業が無くなればその分工賃も安く済みます。

弦アースの問題は解決の目処がたったので、次は環境ノイズ対策に移ります。
環境ノイズは蛍光灯やアダプター、PCモニター等から発生している電磁ノイズをピックアップからジャックまでの配線が拾って「サー」と鳴るホワイトノイズが主になります。
キャビティ全体に導電塗料を塗って配線を電磁ノイズからシールドします。

マスキング

導電塗料がはみ出ないようにキャビティ周りをマスキングして筆で塗っていきます。

導電塗料塗布

十分な導通が生まれるまで数回塗り重ねます。
ラグ等でアースを繋げれば作業完了です。
今回はアースプレートが元々ついているモデルだったため必要はないのですが、これも錆びやすい素材のため、念の為に導電塗料を一部はみ出して塗りコントロールプレートとの接触面を作っておきました。

導通面

外した配線を元に戻してノイズ対策は完了です。

配線

併せてご依頼を頂いていたベーシックメンテナンスを施して全作業が完了しました。

アンプからのノイズは明らかに小さくなり、音作りの幅も広がりました。

全体像

アンプで音を増幅する楽器のため、ノイズとは切っても切れない関係です。
適切な対策を施すことで音の変化は最小限に抑えて、ノイズ量を落とすことができます。
バンド全体のノイズを小さくすることで結果的には聞かせたい音の抜けが改善します。
音楽的に非常に重要なポイントになりますので、ぜひお試しください。

タイトルとURLをコピーしました