先日、ブリッジ剥がれの修理を行ったFURCH G23-SFCTの続きの作業事例です。
前回の作業の様子はコチラ↓
弦高が高いのが気になるということで持ち込まれたギターですが、原因は2つでした。
1つは前回修理したブリッジの剥がれ。
2つ目はネックの順反りです。
ギターのネックは弦に引っ張られて、徐々に指板側に反っていきます。
この状態のことを順反りと言います。
対策として製造時にネックの中に金属製のロッドを仕込んで、反りとは逆方向に力を加えられるようになっています。
しかし弦を張っている時間が長かったり、湿度や温度変化の影響でネックの反りが進行し続けると、いずれロッドの調整範囲を超えてしまいます。
こうなってしまうと調整では対応できず、修理が必要になります。
修理の方法はフレットのすり合わせだったり、フレットを抜いて指板を削る指板修正、あとは熱と水分を使って木部を曲げる熱矯正があります。
ネックの状態や塗装の仕様などに合わせて修理方法を選びますが、今回のギターは反りが強く、指板面が塗装されておらず、ねじれや波打ちの症状は無いことから、熱矯正を選択しました。
指板面から水分と熱を加えた状態で角パイプに固定するように力を加えて反りを矯正します。
木材は力を加えるとしなりが生まれ、矯正後も固定を外すとしなりが戻るため、ナット側にスペーサーを入れて逆反り気味に固定しています。
この時にネックに加える水分量、熱量、力量は1本1本のギターによって違います。
どれも多すぎればネックに悪影響を与えて、割れや折れ、ねじれに繋がります。
少量からスタートして、十分な結果が出るまで何度も繰り返すことになります。
矯正後も熱と水分が完全に抜けて木材が安定するまで固定を続けるので、一度の試行に1週間ほど時間をかけます。
そのため作業完了までの期間が読めず、今回は当初1ヶ月での完了を目指していましたが最終的にトータルで1ヶ月半ほどお時間を頂きました。
熱矯正後は僅かにねじれや波打ちの症状が出るので、フレットのすり合わせを行い微調整します。
長らくお待たせしましたが、弦高もしっかりと下がり、ネックも調整の余地が生まれるまでに修正できました。
ギターは構造上どうしてもネックの反りが避けられません。
反って弾きにくくなってしまったギターもよみがえらせることが可能です。
寿命だと諦めずにぜひご相談下さい。