【作業事例】ESP SNAPPER-AS Driftwood ステンレスジャンボフレット交換

ESP SNAPPER-AS Driftwood

ESP社製の木目を活かしたドリフトウッド加工が施されたSNAPPERをお預かりしました。
今回は、標準仕様であるJESCAR FW55090-NS(ミディアムジャンボサイズ)のフレットから、ステンレス製のJESCAR 58118-SS(ジャンボサイズ)への交換をご依頼いただきました。

フレットサイズを大きくすることで、軽い力で弦を押さえられるようになるほか、チョーキングやビブラートの際に指が指板に触れて引っかかるのを防ぎ、よりスムーズな演奏が可能になります。

また、一般的なニッケルシルバー製のフレットに比べ、ステンレス製フレットは非常に硬く、摩耗しにくく、錆びにも強いため、正確に取り付けることで新品同様の弾き心地が長く続きます。
ただし、その硬さゆえに加工は難しく、取り付けには高い精度が求められます。

フレット交換前

指板の状態と作業方針

通常、フレット交換時にはフレットを抜いた後に指板面を削り、ネックの反り・ねじれ・波打ち、さらにフレット溝の調整を行います。
また、一般的にフレットを打った後に塗装作業を行い、後からフレットの塗装を剥がすため、フレットと指板の境目が塗装でつながっている場合にはフレットを抜くと指板の塗装が剥がれることがあります。
そのため、塗装されたメイプル指板のギターではフレット交換時には再塗装が必要となります。

今回は「費用を抑えたいので、可能であれば塗装なしで作業をお願いしたい」とのご希望をいただきました。
状態を確認したところ、ネックの状態は良好で、フレットにも塗装が乗っていない仕上がりでしたので、塗装作業を行わなくても良い可能性はあります。
フレットを抜いてみて、フレットの溝の状態にも問題がなければ塗装は行わない方向で作業に取り掛かりました。

フレット抜き後

フレットを抜いた際にもフレット溝に問題はなく、指板を削る必要はないと判断し、溝の調整のみを行い、新たなフレットの打ち込みへと進みました。

フレット交換前後の比較

交換前後の画像を見比べると、フレットがひと回り大きくなっているのが確認できます。
実際の高さの差は約0.07mm程度ですが、指で触れた際にはその違いがはっきりと感じられます。

セットアップ・完成

完成

弦を張り、最終的なセットアップを行って作業完了です。

かつてのステンレスフレットは「硬くて音がキンキンする」という印象がありましたが、近年は素材の改良が進み、硬度とサウンドのバランスが非常に良好になっています。
今回の個体も、音抜けの良さと心地よいブライトさを併せ持った仕上がりになりました。

ジャンボフレット特有の指板に指が触れにくい独特の弾き心地には少しクセはありますが、慣れるとジャンボフレットじゃないと弾けないと言う人もいるくらい格別のスムーズさがあります。
特に速弾きなどのテクニカルなプレイを好む方に人気が高いのも頷けます。

フレット交換は“修理”だけではない

フレットのサイズや素材は、演奏性やサウンドに大きな影響を与えます。
さらに、正確に取り付け・調整されたフレットは、弦振動を損なわず、音の立ち上がりやサステイン、ピッチの安定性にも大きく寄与します。

すり減って音が悪くなってからの交換だけでなく、自分好みの弾き心地や音を追求するためのフレット交換という選択肢もあります。
ぜひ一度、ご検討されてみてはいかがでしょうか。

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